「よ~し。掛かり稽古はじめ!その後、切り返しで終了」
その裕也の掛け声とともに部員全員の竹刀の打突音が
道場に響き渡り、夏休み最後の稽古が終わった。
稽古終了の挨拶が済み、3年生から道場横の水のみ場に向かう。
カラカラに乾いた喉を潤すためだ。マネージャーが作ってくれた麦茶が
冷えているのは知っているが、なんとなく外に出て強烈な光を浴びながら
飲みたくなる。日差しで熱くなっている蛇口をひねり、生温かい水が
喉を通り過ぎる。ゴクッゴクッ。30秒か1分か随分長く飲み続けた気がする。
ふと顔を上げ横を見ると、裕也が顔を洗っていた。顔を洗った水滴が強烈に
降り注ぐ陽の光に反射し、キラキラと光っていた。俺は、そんな裕也を素直に
きれいだと感じた。そして見つめてしまっていた。「ゴクッ!」まだ口に残っていた水が
音を立てて俺の喉を落ちていった時、我に返るとともに裕也も、その音に
気が付いたのか水滴が滴るままの顔を上げた。そして俺たちは目が合った。
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